賢くなるよりも、優しくなる方がはるかに難しい

少し前に、ある人と軽く口論になった。

いい大人になって、いまや、そんなことは珍しいのだけれど、

私にとって、そのことは、そこそこ大事なことだったから。


口論というのは、おかしなもので、

言い合っているうちに、ますます

互いにひけなくなってくる。


その日は、気まずいムードで帰ることに。


譲りたくないことではあったけど、

いい関係を壊してまで押し通すことに意味があるのかな、

私たちはお互いにリスペクトしあっていることを知っているのに。


そこで、ふと、ある話を思い出した。

それは、Amazon.com CEOのジェフ・ベゾス氏が、

母校・プリンストン大学の卒業式で話したこと。

彼が子どもの頃に体験したできごとの話だ。


ある夏のある旅で事件は起きました。
私はそのとき10歳くらいだったと思います。私は後部座席に座っていて、祖父が運転していました。祖母は助手席に座っていました。


彼女は旅の間中いつもたばこを吸っていたのですが、私はそれがとても嫌でした。特にそのにおいには我慢が出来ませんでした。


この頃私は、周りにある様々なものを計算して遊んでいました。

例えばガソリンのマイレージだとか、食料品に使ったお金を計算したりしていました。


ちょうど同じ頃、たばこの悪影響を啓蒙するキャンペーンをよく耳にしていました。

正確に思い出せませんが、「たばこを一口吸う度に人生の何分か寿命が縮まる」という内容で、確かたばこを一吸いすると2分縮まる、だったように記憶しています。


いずれにせよ、祖母の為にこの計算をしてみることにしました。

一日に吸う本数、そして一本のたばこを何口で吸うかを元に計算をしてみました。


自分で導いた計算の答えに満足した私は、後部座席から助手席の方に身を乗り出して祖母の肩をトントンと叩き、自信満々に言いました、


「おばあちゃん! たばこを一口吸うごとに2分寿命が縮まるんだ! つまりおばあちゃんの寿命は9年も縮まっていることになるんだよ!」


この時のことは非常に鮮明に記憶に残っています。私が求めていた反応とは違う反応が返って来たのです。

(会場笑)


私は私の賢さと計算のスキルを祖父母に褒めて欲しかっただけだったのです。


「ジェフ! お前はすごく賢いな! こんなに複雑な計算が出来るなんて。人生の一年から何分が奪われるか、だって? 割り算も出来るのか!」


と、こんな具合にはなりませんでした。

(会場笑)


なんと、祖母が泣き出してしまったのです! 

彼女が泣いている間、私はどうしたらいいかわからず後部座席に座っていました。


それまでずっと黙って運転していた祖父がハイウェイの路肩に車を停めました。

そして私の方に周って車のドアを開け、付いてくるように私を促しました。

「やばい! 怒られる!」


祖父はとても賢い穏やかな人でした。

祖父に叱られたことは過去に一度もありませんでした。


これがその記念すべき最初になるんだ、いや待てよ、もしかしたら、車に戻っておばあちゃんに謝りなさい、と説かれるのかもしれない、なんて不安に思っていました。


今までこんなことは一度もなかったので、一体これから何が起こるのか想像もつかなかったのです。


彼はトレイラーの横で立ち止まりました。私もそこで止まります。

少しの沈黙の後、彼は私をしっかりと見て、やさしく穏やかにこう言いました。


「ジェフ、いつかわかる日が来ると思うが、賢くなるよりもやさしくなるほうがはるかに難しいことなのだよ」


(出典:ログミー “「才能と選択の違いを知ること」 Amazon創業者ジェフ・ベゾスが卒業式で語った、道の切り開き方”)


このセリフを、座右の銘にしていたことを思い出した私は、翌日、さっさとこの勝負から下りた。


「昨日はごめんなさい」

ライティング・コンサルタントの視点から

杉浦由佳  ライティング・コンサルタント。コピーライターとして独立して15年。書くための発想法、訴求力のある文章術などを中心に、仕事現場や日常のことなど、とりとめなく書いています。トレンド誌やビジネス誌のコラム広告のほか、企業のプロモーション支援・ブランディングに携わる一方、元ITエンジニアの杵柄で「情報セキュリティ」の連載記事なども執筆。「稼げるライターのためのライティング講座」 講師。

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